※本記事では、ゲームの内容に触れる部分がございます。 また、各作品はオリジナルの創作物(一次創作物)からのインスピレーションを受けて制作しておりますが、キャラクターデザイン等をコピーしたものではございません。一次創作物、また関係者とは全く関係ございません。
※This article includes something from each game's contents. All works are inspired by the original horror games, but they do not copy anything including character designs. The author does not have any connection nor relation between the game developers.
ホラーゲームの女の子を描くウィーク
Ib、くまのレストラン、まつろぱれっと…「恐怖」と「可愛らしいもの」の生み出すグロテスク感
9/24〜10/2までの一週間、筆者は「ホラーゲームの女の子を描くウィーク」と題して、およそ1日一枚のペースで絵を描き続けた。ホラーの要素として、一見「恐怖」とは遠い存在にある「少女」というモチーフはしかし、組み合わせられることでむしろ一層強く恐ろしさを引き出す効果をもたらす。この、フィクションの少女が持つ「愛らしさ」、「儚さ」、「頼りなさ」といったイメージと、プレイヤーの血の気を引かせるような事物という、相反するものが混ざり合うという「グロテスク感」を追究することが今回の企画の趣旨だ。
期間中、筆者は「まつろぱれっと」、「くまのレストラン」、「Ib」の三作から得たインスピレーションをもとに作品を製作した。
なお作品は左が油彩、右がPixeloilとなっている。
第一弾「まつろぱれっと」をテーマに:『林檎を持つ貴婦人』
油彩とPixeloil
「まつろぱれっと」は、「曰く付き」と言われる絵に描かれた少女の要求に応えながら、画家となって数日間の間に絵を完成させていくことで、少女の絵が「呪われた絵」であると称されるに至った背景を探り出すというゲームだ。上の絵はその少女のイメージを筆者なりにアレンジしたもの。オリジナルとは年齢もドレスの色も異なっているが、林檎を持っている理由はプレイ済みの方ならきっと分かっていただけるだろう。
背景に溶け込むような黒いドレスと、対照的に白い髪の色は、ゲーム開始時の少女の姿を表している。ゲーム内ではこれに徐々に色が付いていくのだが、白黒の対象が今回の「グロテスク感の表現」というテーマに合うと思い決定した。
第二弾「くまのレストラン」をテーマに:"Papa Bête vous apporte le dernier dîner"
第二弾は「くまのレストラン」のイメージ。「くまのレストラン」は温もりある絵本のようなタッチで描かれる「くま」のシェフが登場するが、筆者は闇の中から料理を運んでくる野獣を描いた。これは少女ではないが、やはり「くま」という親しみをもてるモチーフと、「死後の世界で最後の晩餐を振る舞われる」というアンビバレントな状態を表現したいと考え、題材に選んだ。
なお、「くま」ではなく「野獣」にした理由は、古典の西洋絵画においては野生の動物、または空想上の異形の動物が、あるものを象徴するモチーフとして現れることがあるため、それに倣ったものである。
ギュスターヴ・モロー『オイディプスとスフィンクス』(The Met Museum, public domain)
第三弾「Ib」をテーマに:『乙女と深海魚』
第三弾は、インディーズホラーゲームの代表格ともいえる「Ib」から、主人公イブのイメージで描いた。彼女の赤いドレスはイブの持つ赤いバラからのインスピレーションである。また、作中の架空の画家「ワイズ・ゲルテナ」は、シュールレアリスム的で奇抜な作品群を制作したとされているため、「彼が少女を描くなら、素直な描き方はしないだろう」と考え深海魚と組み合わせた。深海魚のモチーフは、ゲーム内で実際に使用されている、プレイの鍵となる作品ともなっている。
豊かな金髪をたくわえ、膝をついた女神が花びらを散らして遊んでいる。
こちらは同じく「Ib」から、サブキャラクターのメアリーのイメージを描いたもの。上の作品と同様に、黄色のドレスはメアリーの持つ黄色いバラからのインスピレーションである。
彼女の頭髪の「金色」や、「女神」と言ったモチーフは、通常であれば「豊穣」の意味を持つ。しかし、これは「花を散らしている」様子、つまり「花」という、生命力の象徴を散らすさまを描いた。なぜ花を散らしているのか、ゲームをプレイした方ならきっと思い当たることだろう。
以上、「ホラーゲームの女の子を描くウィーク」と題し制作した4作品を紹介した。
参考文献
Gustave Moreau "Oedipus and the Sphinx", 1864. The Met Museum, jpeg.
https://www.metmuseum.org/art/collection/search/437153
Henry Fuseli "The Nightmare", 1781. Wikipedia, jpeg.
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Nightmare
"Gothic Nightmares Fuseli, Blake, and the Romantic Imagination" Tate Britain, 2006.2.15-5.1.